
暑い夏が終わり、涼風を感じるようになると、秋の花の季節が到来します。日本の秋といえば、紅葉を思い浮かべる人が多いと思いますが、この季節の魅力は木々の紅葉だけではありません。
実は、秋にはさまざまな花を見ることができるのです。また、秋の花は優しい色合いのものが多く、しっとりとした風情を感じさせてくれます。
今回の記事では、日本の秋を彩る代表的な5つの花をご紹介します。
1.風情を感じる!秋らしい色合いを感じる秋の花といえばコレ
秋の花といえば①「ハギ(萩)」

万葉集にも詠まれ、古くから親しまれているハギは秋の花の代表で、秋の七草の1つにも数えられるマメ科の植物です。
分布は日本全域にわたり、奥ゆかし気な小さな花が枝垂れ咲く様子はこれぞ日本秋、という風情があります。花の色は赤紫が一般的ですが、白や黄色の花を付ける種類もあります。
ハギが見られるおすすめ場所
向島百花園(東京都墨田区)
大悲願寺(東京都あきる野市)
水戸偕楽園(茨城県水戸市)
長福寺(東京都八王子市) 宝戒寺(神奈川県鎌倉)
秋の花といえば②「コスモス(秋桜)」

コスモスが渡来したのは明治中頃といわれ、日本では比較的新しい花です。
メキシコの高原が原産のコスモスは日本の気候に合ったようで、今ではあちらこちらでコスモス畑が見られます。
赤、白、ピンクの3種がもともとの色ですが、品種改良でオレンジ、クリーム、ミックスなどの色のバリエーションと共に、八重咲のものなども開発されました。
風に揺れるコスモスは秋の到来を告げてくれる花です。
コスモスが見られるおすすめ場所
浜離宮恩賜庭園(東京都中央区)
国営昭和記念公園(東京都立川市)
くりはま花の国(神奈川県横須賀市) 上戸川コスモス畑(茨城県潮来市)
水上高原コスモス園(群馬県みなかみ町)
秋の花といえば③「キク(菊)」

皇室の紋として用いられ、50円玉やパスポートの意匠などにも使われている菊は、奈良時代または平安時代に中国から入ってきたものだと言われています。
日本ではバラ、カーネーションと並んで生産高の多い花です。季節になるとあちらこちらで菊花展が開かれ、丹精を込めた自慢の菊が出品されます。
子どもの頭ほどもありそうな大輪のものから、小花が滝のようについたもの、1つの茎から何百もの花がついているものなど、さまざまな菊は見るものの目を驚かせ、また楽しませてくれます。
人形に菊花の衣装を着せる菊人形は、福井県越前市や福島県二本松市のものが大規模で有名です。
菊が見られるおすすめ場所
湯島天神菊まつり(文京区)
菊花花壇展(新宿区)
東京都観光菊花大会(東京千代田区)
笠間の菊まつり(茨城県笠間市)
関東菊花大会(群馬県みどり市)
秋の花といえば④「ヒガンバナ(彼岸花)」

彼岸花の原産地は中国です。秋のお彼岸の頃に咲くのでこの名が付けられました。まず花が咲き、花が終わると葉が茂りますが、その葉も春は枯れてしまいます。
独特な花の形と真っ赤な色から幽霊花、地獄花などありがたくない別名が付けられていましたが、近年は群生地が秋の花見の名所になっています。白や黄色の花も見受けられます。
彼岸花は9月下旬の秋のお彼岸近くに咲くので、この花を見ると秋が近いことを実感します。
鮮やかな赤い花は見ごたえがありますが、花言葉は「喪失」や「死」を連想させ、「二度と会えない人の道に咲く」と言われるほど不吉な意味を持っています。
彼岸花が見られるおすすめ場所
宝蔵院(葛飾区)
巾着田(埼玉県日高市)
南足柄市運動公園(神奈川県南足柄市)
燧ヶ池 大榎周辺の彼岸花(茨城県つくば市)
常泉寺(神奈川県大和市)
秋の花といえば⑤「ダリア」

ダリアは中南米が原産のキク科の花で、ヨーロッパでは18世紀終わり、日本では19世紀の中ごろから栽培されている比較的新しい花です。
大きく色鮮やかで花壇の主役になるイメージの花ですが、とてもたくさんの種類があり、小さく可憐なもの、草丈が低くシンプルな花をつけるもの、中にはチョコレートのような匂いのするものなどもあります。
ダリアが見られるおすすめ場所
ぐんまフラワーパーク(群馬県前橋市)
茨城県フラワーパーク(茨城県石岡市)
両神山麓花の郷ダリア園(埼玉県秩父郡)
町田ダリア園(東京都町田市)
2.【ひと目でわかる】日本の秋を彩る代表的な花
まずは、秋に見頃を迎える代表的な花を一覧でご紹介します。
花の名前 | 主な見頃 | 特徴 |
コスモス(秋桜) | 9月下旬~10月下旬 | 秋風にそよぐ姿が可憐。色の種類も豊富。 |
彼岸花(曼珠沙華) | 9月中旬~9月下旬 | 燃えるような赤色が特徴的で、田んぼの畦道などを彩る。 |
菊(キク) | 10月下旬~11月下旬 | 日本の国花の一つ。品評会なども開かれる高貴な花。 |
金木犀(キンモクセイ) | 9月下旬~10月中旬 | 甘く強い香りで秋の訪れを告げる。 |
秋バラ | 10月上旬~11月上旬 | 春バラより色濃く、香りが深いのが特徴。 |
ダリア | 9月上旬~10月下旬 | 大輪で華やかな花姿が人気。 |
ススキ | 9月~11月 | 秋の野山の象徴。風に揺れる銀色の穂が美しい。 |
萩(ハギ) | 9月上旬~10月上旬 | 秋の七草の筆頭。小さな赤い花が枝垂れるように咲く。 |
3.【全国版】秋の花の名所ガイド
秋の花々が織りなす絶景を体験できる、全国のおすすめスポットをご紹介します。
必見!秋の花 絶景スポットTOP5
名所 | 都道府県 | 主な花 | 見頃 | 特徴 |
巾着田曼珠沙華公園 | 埼玉県 | 彼岸花 | 9月中旬~下旬 | 約500万本の彼岸花が林床を埋め尽くす「赤い絨毯」は圧巻の一言。 |
国営ひたち海浜公園 | 茨城県 | コキア, コスモス | 10月上旬~中旬 | 真っ赤に紅葉したコキアと、色とりどりのコスモスのコントラストが見事。 |
国営昭和記念公園 | 東京都 | コスモス, 金木犀 | 9月~10月 | 広大な敷地内の「花の丘」を埋め尽くすコスモス畑は首都圏最大級。 |
三光コスモス園 | 大分県 | コスモス | 10月下旬 | 八面山を背景に約2700万本のコスモスが咲き誇る西日本有数の名所。 |
矢勝川堤 | 愛知県 | 彼岸花 | 9月下旬~10月上旬 | 童話『ごんぎつね』の舞台。約300万本の彼岸花が川沿いを赤く染める。 |
地域別 詳細ガイド
- 関東地方:
- コスモス: 国営昭和記念公園 (東京), 国営ひたち海浜公園 (茨城), あけぼの山農業公園 (千葉)
- 彼岸花: 巾着田曼珠沙華公園 (埼玉), 県営権現堂公園 (埼玉), 小出川 (神奈川)
- 菊: 湯島天満宮 (東京), 笠間稲荷神社 (茨城)
- 関西地方:
- コスモス: 亀岡『夢コスモス園』(京都), 般若寺(コスモス寺)(奈良), 兵庫県立公園あわじ花さじき (兵庫)
- 彼岸花: 葛城一言主神社 (奈良), 明日香村 稲渕の棚田 (奈良)
- 中部地方:
- 彼岸花: 矢勝川 (愛知), 津屋川堤防 (岐阜)
- コスモス: 138タワーパーク (愛知), 山中湖 花の都公園 (山梨)
- 九州地方:
- コスモス: 三光コスモス園 (大分), 花の駅 生駒高原 (宮崎)
- 彼岸花: つづら棚田 (福岡)
4.より深く知る - 日本文化と秋の花
日本の人々は、古くから秋の花を愛で、芸術や文学の題材としてきました。
秋の訪れを告げる「秋の七草」
奈良時代の歌集『万葉集』で山上憶良が詠んだ歌が由来とされる「秋の七草」。春の七草が「食べる」のに対し、秋の七草は「見て楽しむ」のが特徴です。
- 萩(ハギ)、薄(ススキ)、葛(クズ)、撫子(ナデシコ)、女郎花(オミナエシ)、藤袴(フジバカマ)、桔梗(キキョウ)
これらはかつて日本の野山に咲く素朴な草花でしたが、現在ではフジバカマやキキョウが絶滅危惧種に指定されるなど、その姿は貴重なものとなっています。
俳句や絵画に描かれた秋の花
- 俳句の世界: 俳句では秋の花は「季語」として重要な役割を果たします。コスモスの揺れる姿は郷愁を、菊は晴れ渡る秋空(菊日和)を、金木犀はその香りを、彼岸花は生命の移ろいを表現します。風ふいにコスモス畑かきまぜて 今橋眞理子
- 絵画の世界: 日本画では「秋草図」が古くから愛される画題です。特に琳派の画家たちは、金箔を背景に菊や萩、薄などをリズミカルに描いた屏風絵を多く残しました。これらの作品は、秋という季節の本質的な美しさを捉えています。
まとめ:季節と共に生きる
日本の秋の花々を愛でることは、単なる観光や園芸を超えた、日本の文化に深く根差した営みです。コスモス畑の壮大さ、畦道に咲く彼岸花の哀愁、金木犀の芳香は、自然の移ろいに心を寄せ、五感で季節を味わう豊かさを私たちに教えてくれます。
この秋、あなたも美しい花を探しに出かけてみませんか?