イランの文化は、古代ペルシャ文明から深い歴史と多様な要素を受け継いでいます。
イスラム教シーア派が主要な宗教であり、宗教と伝統が日常生活に深く根ざしています。家族や友人とのつながりを重んじ、温かいおもてなしや敬意を大切にすることが特徴です。
記事ではそんなイランの文化についてわかりやすく紹介しています。
1.イランの特有の文化まとめ
イランは多様な文化と古い歴史を持つ国であり、多くの独自の文化や習慣があります。
おもてなし(タアルーフ)
イランの文化では、おもてなしと礼儀が非常に重要です。タアルーフは、自分の気持ちや意向を控えめに表現し、相手を尊重し、遠慮することを意味します。
お茶
イランでは、お茶は社交の中心であり、友人や家族との集まりで出されます。また、訪問者を歓迎する際にもお茶が出されます。
ノウルーズ(イランの新年)
イランの新年は春分の日に始まり、古代ペルシャの祝祭に由来します。
ノウルーズは家族と友人と共に過ごし、贈り物を交換し、特別な料理を楽しむ期間です。
ソフレ・ハフト・シーン
ノウルーズの際には、家庭で「ハフト・シーン」と呼ばれる特別なテーブルセッティングが用意されます。テーブルには、シーナ(泳ぐ)、シーブ(リンゴ)、シーラー(ニンニク)、サブゼ(芽)、セリ(セロリ)、セルケ(ヴィネガー)、サマク(スマック)という7つのシーン(「S」で始まるアイテム)が並べられます。
イラン料理
イランの料理は多様で、地域によって異なる特色があります。代表的な料理には、ケバブ、クーシャ・ディグ(肉と野菜の煮込み)、フェセンジャン(クルミと鶏肉の煮込み)、アシュ・レシュテ(豆と麺のスープ)などがあります。
伝統的な音楽とダンス
イランには伝統的な音楽やダンスが豊富にあります。
地域ごとに独自の楽器やダンススタイルがあり、祝祭や結婚式などの特別なイベントで演奏・披露されます。
詩と文学
イランの文学は詩が特に有名で、古典詩人のフェルドウシーやハーフェズ、ルーミーなどは
世界的にも著名です。彼らの詩は、愛や哲学、神秘主義、人生の教訓など幅広いテーマを扱っています。
イランでは詩の朗読会が開かれることもあり、多くの人々が詩を暗唱しています。
絨毯(カーペット)
イランは、高品質な手織りの絨毯で有名です。イラン絨毯は美しいデザインと色使いが特徴で、世界中のコレクターや愛好家に愛されています。
伝統的な技術が受け継がれており、家庭や宗教施設で使用されることが多いです。
アーキテクチャ
イランの建築は、イスラム建築の要素とペルシャ建築の伝統が融合した独自のスタイルが特徴です。
モスクや宮殿、公共施設、家屋など、様々な建築物に美しいタイルや装飾が施されています。
ドレスコード
イランでは、イスラム教の教えに基づく保守的なドレスコードが適用されます。
特に女性は、ヒジャブ(頭を覆うスカーフ)を着用し、全身を覆うような服装をすることが求められます。
スポーツ
イランでは、サッカーとレスリングが特に人気のあるスポーツです。また、伝統的なスポーツとしてズールカーネ(体力と精神力を鍛えるための運動)があります。
家族の重要性
イランの文化では、家族が非常に重要です。親族が互いに助け合い、結婚式や誕生日などの家族行事を大切にします。
また、尊敬の念を表すために、年長者や親戚に敬称を使うことが一般的です。
2.イランの食文化や有名料理
イランの食文化は非常に豊かで、地域ごとに異なる特色があります。
チェロ・ケバブ(Chelow Kebab)
イランの国民食とも言われるチェロ・ケバブは、サフラン入りのバスマティ米と共に供される焼き串です。種類によっては、牛肉、羊肉、鶏肉が使われます。
クーシャ・ディグ(Khoresh-e Ghormeh Sabzi)
クーシャ・ディグは、香草(コリアンダー、パセリ、フェンネル)と肉(通常は羊肉)を使った煮込み料理で、レッドキドニービーンズと乾燥したライムも加えられます。
これには、サフラン入りのバスマティ米が添えられます。
フェセンジャン(Fesenjan)
フェセンジャンは、クルミと鶏肉を使った濃厚な煮込み料理で、ザクロのペーストが特徴の甘酸っぱい風味を出しています。これにも、バスマティ米が添えられます。
タディーグ(Tahdig)
タディーグは、鍋底に焼き付いたサフラン入りのバスマティ米で、カリカリの食感が特徴です。イラン料理では、タディーグが最も人気のある部分とされています。
アシュ・レシュテ(Ash-e Reshteh)
アシュ・レシュテは、豆、野菜、麺を使った濃厚なスープで、ミント、フライドオニオン、ヨーグルト、カシュク(乾燥したヨーグルト)でトッピングされます。
ドルメ・バデムジャーン(Dolmeh Bademjan)
ドルメ・バデムジャーンは、ひき肉、米、ハーブ、香辛料を詰めたナスの煮込み料理です。トマトソースでコーティングされています。
ザルシュク・ポロー(Zereshk Polo)
ザルシュク・ポローは、サフラン入りのバスマティ米に、乾燥バラエティ(ザルシュク)が散りばめられた料理です。
このザルシュク・ポローは、鶏肉や丸鶏と一緒に提供されることが一般的です。
ミルザ・ガスミー(Mirza Ghasemi)
ミルザ・ガスミーは、グリルしたナス、トマト、卵、ニンニク、香辛料を使った料理で、タフリ(伝統的なフラットブレッド)やバスマティ米と共に提供されます。
クーク・サブジ(Kuku Sabzi)
クーク・サブジは、たくさんのハーブ(コリアンダー、パセリ、ディル)、卵、ナッツ類で作られた薄いオムレツです。これは、イランのノウルーズ(新年)によく食べられます。
ショール・ザード(Sholeh Zard)
ショール・ザードは、イランの伝統的なデザートで、サフランとローズウォーターで味付けされた米のプディングです。これには、シナモン、カルダモン、アーモンド、ピスタチオがトッピングされます。
イラン料理では、さまざまな香辛料やハーブが用いられ、独特の風味が楽しめます。
また、イランの食文化には、食事を共有し、家族や友人と楽しむという側面もあります。これらの美味しい料理を試すことで、イランの文化に触れることができるでしょう。
3.イランの禁止行為やマナーについて
イランはイスラム教シーア派が主要な宗教であり、その教えが文化や日常生活に深く影響しています。イランでの禁止行為やタブーは主に宗教的、文化的な背景に基づいています。
アルコールの摂取
イスラム教の教えにより、アルコールの消費や販売は禁止されています。イランではアルコールを公共の場で飲むことは違法です。
食物のタブー
イスラム教の戒律に従い、豚肉や豚肉製品は禁止されています。また、動物を食べる場合は、ハラール(イスラム法に従って屠殺されたもの)でなければなりません。
服装に関する規定
イランでは保守的なドレスコードが適用されており、特に女性はヒジャブ(頭を覆うスカーフ)を着用し、全身を覆うような服装を着ることが求められます。
男性も、ショートパンツやタンクトップなどの露出の多い服装は避けるべきです。
ジェスチャーや身体接触
異性同士の身体接触は、握手や抱擁などの軽いものであっても、公共の場では避けるべきです。
また、足を組んで座るときは、靴底を相手に向けないよう注意してください。足で物を指すのも失礼とされます。
写真撮影
宗教的な場所や政府の建物、軍事施設などでの写真撮影は、許可なく行うべきではありません。また、人々の写真を撮る際も、事前に許可を得ることが礼儀です。
宗教的な話題
イランでは、宗教的な話題に対して敏感であり、イスラム教やイランの宗教指導者に対する批判や冒涜は避けるべきです。
政治的な話題
政治に関する話題も敏感であり、公共の場で政府や指導者に批判的な意見を表明することは避けた方が良いでしょう。
4.イラン人の性格とは?
イラン人の性格は、一般化することは困難ですが、多くのイラン人に共通する特徴がいくつかあります。
温かいおもてなし
イラン人は、訪問者に対して非常に親切で歓迎の気持ちを示すことで知られています。家庭を訪れる際には、しばしばお茶や軽食が振る舞われ、歓迎されます。
社交的
イラン人は、家族や友人とのつながりを大切にする社交的な性格の持ち主です。集まりや祝賀会などのイベントがよく開かれ、人々は積極的に交流します。
尊敬と敬意
イランの文化では、年長者や親戚に対して敬意を示すことが非常に重要です。年長者への敬意を示す言葉やジェスチャーが一般的に用いられます。
タアルーフ(Taarof)
タアルーフは、イランの社会に特有の礼儀作法で、丁寧な言葉や態度で相手に敬意を示すことを意味します。これは、物やサービスを断りながら受け入れることも含んでおり、外国人には理解しづらい場合もあります。
プライドとナショナリズム
イラン人は、国の歴史や文化に誇りを持っており、強いナショナリズムを感じることがあります。このため、国や文化に対する否定的な意見に敏感になることがあります。
話し好き
イラン人は、話し好きであり、他人とのコミュニケーションを楽しむことが多いです。人々は、友人や家族との電話や会話で情報交換や意見交換を積極的に行います。
感情表現
イラン人は、感情表現が豊かであり、喜びや悲しみを率直に示すことが一般的です。祝賀会や葬儀などのイベントでは、感情が大きく表現されることがあります。
5.イランの雑学や豆知識を教えて
ペルセポリス遺跡
イランにはペルセポリスという古代都市の遺跡があります。これは、紀元前6世紀から紀元前4世紀にかけて繁栄したアケメネス朝ペルシアの首都でした。ペルセポリスは、UNESCOの世界遺産にも登録されています。
サフランの産地
イランは、世界最大のサフラン生産国であり、世界のサフランの約90%がイランで生産されています。サフランは、料理やお茶、伝統医学、香水などに使用されています。
古代の灌漑システム「カナート」
イランには、古代の地下水路システム「カナート」があります。これは、乾燥した環境において水を運ぶために紀元前1千年紀に開発された技術で、現在でも農業や生活用水として利用されています。
イランの小型手術の歴史
イランは、現代医学の分野でも歴史があります。イランの医者アブー・アリー・シーナー(Avicenna)は、11世紀に「医学のカノン」と呼ばれる本を著し、その知識はヨーロッパ全土に広まりました。
イランのカーペット
イランは、美しい手織りのペルシャカーペットで世界的に有名です。これらのカーペットは、豊かな色彩や繊細なデザインが特徴で、高品質なものは高額で取引されることもあります。
ペルシャ語の影響
イランの公用語であるペルシャ語(ファルシー語)は、中世ヨーロッパの文学や科学に影響を与えました。例えば、英語の「チェックメイト」や「アルコール」、「パラダイス」などの言葉は、ペルシャ語に由来しています。
ノウルーズ(Nowruz)
イランでは、春分の日にあたる3月21日に新年を祝う「ノウルーズ」という祭りがあります。この祭りでは、家族や友人が集まり、食事やお祝いを共にします。ノウルーズは、ゾロアスター教の伝統に基づいており、古代ペルシャの春の祭りから始まったとされています。
チェスの起源
チェスは、インド起源とされていますが、イラン(古代ペルシャ)もチェスの発展に大きな役割を果たしました。ペルシャ語でチェスを意味する「シャトランジュ」は、現代のチェスに似たルールでプレイされていました。
ポロ(Chogan)
ポロは、古代ペルシャで発祥したとされるスポーツで、イランでは「チョガン」と呼ばれています。現代のポロはイギリスで発展しましたが、その起源はイランに遡ることができます。
イランの詩人
イランには、世界的に有名な詩人が多くいます。13世紀の詩人ルーミーやハーフェズ、フェルドウシなどがその代表的な例です。彼らの詩は、イランの文化や哲学に大きな影響を与えています。
イランのピクニック文化
イラン人は、屋外でのピクニックを楽しむことが大好きです。週末や祝日には、家族や友人と一緒に公園や自然の中で食事やお茶を楽しむ姿がよく見られます。
イランのナッツ類とドライフルーツ
イランは、ナッツ類やドライフルーツの生産・消費が盛んです。
特に、ピスタチオやアーモンド、ウォールナッツ、ザクロ、アプリコットなどが有名で、お土産としても人気があります。