
アメリカ旅行の準備は順調ですか?「日本食が恋しくなるかも」「常備薬は必要だし…」と荷造りをしていると、ふと「これってアメリカに持ち込めるんだっけ?」と不安になることがありますよね。
アメリカは食品や医薬品の持ち込みルールが世界で最も厳しい国の一つです。知らずに禁止品を持ち込むと、没収されるだけでなく、最高で$10,000(約150万円)もの高額な罰金が科される可能性も。
この記事では、アメリカの税関・国境警備局(CBP)や運輸保安局(TSA)の最新情報に基づき、日本人旅行者が特に注意すべき持ち込み禁止・制限品を、どこよりも分かりやすく解説します。
目次
【最重要】これだけは覚えて!特に注意が必要な持ち込み禁止品
時間がない方のために、まず結論から。日本人旅行者がうっかり持ち込みがちで、ほぼ100%没収される代表的なものがこちらです。
- 肉エキス入りの食品全般
- カップラーメン、インスタント焼きそば
- カレールー、シチューの素
- コンソメ味やビーフ味のスナック菓子
- 肉エキスを含むだしの素、ブイヨン、鍋つゆ
- 生の果物・野菜
- 卵(生、半熟)
- ワシントン条約で規制される製品
- 象牙、べっ甲製品など
- 偽ブランド品・海賊版
なぜこれらがダメなのか、そして「これはどうなの?」という細かい疑問について、以下で詳しく見ていきましょう。
【食べ物編】最大の難関!肉エキスとお米のルール
アメリカへの食品持ち込みで最も厳しく、そして複雑なのがこのカテゴリーです。原則は**「アメリカの農業や生態系にリスクのあるものは持ち込ませない」**という点にあります。
日本人旅行者の最大の落とし穴:「肉エキス」
多くの方が驚くのが、肉そのものだけでなく、牛肉・豚肉・鶏肉などの「エキス」や「パウダー」が微量でも含まれている加工食品が、生肉と同じく厳しい規制の対象になるという点です。
これは、口蹄疫(FMD)や鳥インフルエンザといった家畜の病気が侵入するのを防ぐためです。
具体的に持ち込み禁止となる食品例
| 品目 | 英語名 | 持ち込み可否 | 理由・注意点 |
| カップラーメン | Instant Ramen | ほぼ禁止 | ほとんどのスープに「ポークエキス」「チキンエキス」が含まれるため。 |
| カレールー | Curry Roux | ほぼ禁止 | 多くの製品に牛脂や肉エキスが使われているため。 |
| スナック菓子 | Snacks | 条件付き | コンソメ味、BBQ味、ビーフジャーキー味などは肉エキスを含むため禁止。塩味、のり塩味などはOK。 |
| だしの素・ブイヨン | Soup Stock | 条件付き | 原材料に肉エキスが入っていなければOK。昆布やかつお節のみの出汁は可。 |
【対策】 日本から食品を持って行く際は、必ずパッケージ裏の原材料表示を確認してください。「肉」「ビーフエキス」「チキンパウダー」といった記載があれば、持っていくのは諦めましょう。
お米、お菓子、調味料は持ち込める?
| 品目 | 持ち込み可否 | 主要な考慮事項と説明 |
| 精米された白米 | 条件付きで可 | 害虫リスクがないよう商業的に精米・包装されている個人消費量のものは、申告すれば通常許可されます。籾殻(もみがら)付きの玄米などは禁止です。 |
| 煎餅・あられ | 条件付きで可 | 肉エキスを含まない醤油味や塩味はOK。 |
| 味噌・醤油 | 一般的に可 | 肉エキスを含まない限り、加工調味料として許可されます。 |
| 漬物・梅干し | 条件付きで可 | 商業的に瓶詰めや真空パックされたものはOK。自家製は禁止です。 |
| 魚介類 | 一般的に可 | 個人消費量の範囲内であれば、干物、燻製、缶詰なども持ち込み可能です。ただし、フグや特定のキャビアは規制対象です。 |
| 乳製品・卵 | 制限あり | 固形のチーズやバターは基本的にOK。液体ミルクやヨーグルトは病気発生国からは禁止です。生卵は全面禁止ですが、月餅の中の完全に火が通った塩漬け卵黄などは許可されています。 |
【医薬品・化粧品編】常備薬とコンタクトレンズの注意点
ご自身の健康に関わるものは、正しく準備すれば問題なく持ち込めます。
医薬品の基本ルール
FDA(米国食品医薬品局)の基本方針は「個人使用目的の未承認薬の輸入は違法」ですが、旅行者のための例外(Personal Importation Policy)が設けられています。
- 量は90日分以内:個人使用目的の妥当な量に留めましょう。
- 元の容器に入れる:ピルケースなどに移し替えず、処方箋ラベルが付いたままの容器で携帯します。
- 処方箋・診断書の準備:特に規制薬物(下記参照)や注射器が必要な場合は、病名と治療の必要性を記載した英語の処方箋または医師の診断書を必ず携行してください。
規制薬物(Controlled Substances)とは?
鎮痛剤、睡眠導入剤、精神安定剤、ADHD治療薬など、乱用の可能性があるとDEA(麻薬取締局)が指定する医薬品です。これらは必ず税関で申告が必要です。
- 注意:アメリカの一部の州で大麻が合法化されていますが、連邦法では違法です。医療用・嗜好用を問わず、国境を越えて大麻製品を持ち込むことは固く禁じられています。
コンタクトレンズ・化粧品
- コンタクトレンズ:度入りのものは医療機器と見なされます。90日分以内の個人使用量であれば、未開封の箱のまま持参すれば問題ありません。洗浄液は液体ルールの対象です(後述)。
- 化粧品:個人使用目的であれば、一般的な化粧品(ファンデーション、口紅など)は問題ありません。ただし、機内持ち込み手荷物に入れる液体(リキッドファンデーション、マスカラ、化粧水など)は、後述するTSAの液体ルールに従う必要があります。
【現金・お酒・タバコ編】免税範囲と申告義務
現金の持ち込み:$10,000の壁
アメリカへの現金の持ち込み・持ち出しに上限はありません。しかし、合計で$10,000(または相当額の外貨)を超える場合は、税関で**「FinCENフォーム105」**を提出し、申告する法的な義務があります。
- 対象:現金(米ドル、日本円など)、トラベラーズチェック、署名済みの個人小切手など全てを含んだ合計額です。
- 罰則:申告を怠ると、全額没収や刑事罰の対象となる可能性があります。正直に申告しましょう。
お酒とタバコの免税範囲
| 品目 | 免税範囲(21歳以上) | 注意点 |
| アルコール飲料 | 1リットル | 超過分は関税を支払えば持ち込み可能。ただし、州法がより厳しい場合もあります。アルコール度数70%を超えるものは持ち込み禁止です。 |
| タバコ | 紙巻きタバコ200本(1カートン) または 葉巻100本 | キューバ産の葉巻は禁止です。加熱式タバコのデバイスはリチウム電池内蔵のため預け入れ不可、機内持ち込みのみ。 |
空港の保安検査(TSA)ルール:機内持ち込みの基本
税関(CBP)の「国に持ち込めるか」というルールとは別に、空港ではTSAによる「飛行機内に持ち込めるか」という保安検査のルールがあります。
液体物の「3-1-1ルール」
機内持ち込み手荷物に入れる液体、ジェル、クリーム類には厳しい制限があります。
- 3:3.4オンス (100ml) 以下の個々の容器に入れる
- 1:それらの容器を、容量1クォート (約1リットル) のジッパー付き透明ビニール袋1つにまとめる
- 1:その袋は乗客1人につき1つまで
- 例外:処方薬、市販薬、乳幼児用のミルクやベビーフードは、100mlを超えても妥当な量であれば持ち込み可能ですが、保安検査で他の荷物とは別にして検査員に申告する必要があります。
最重要:リチウム電池(モバイルバッテリー)のルール
予備のリチウムイオン電池(モバイルバッテリー、スマホ充電ケース、予備バッテリーなど)は、預け入れ手荷物に入れることが固く禁止されています。必ず機内持ち込み手荷物に入れてください。
これは、貨物室で発火した場合に対応が困難なためです。ノートPCやスマートフォンのように機器に内蔵されているバッテリーは預け入れも可能ですが、電源を完全に切り、偶発的に作動しないよう保護することが推奨されます。
申告が最善の策!迷ったらすべて伝えよう
アメリカの税関で最も重要な原則は**「正直な申告」**です。
税関申告書には、食品や農産物、1万ドル超の現金などを持ち込んでいるか質問する項目があります。少しでも疑わしいものがあれば、必ず「はい」にチェックを入れ、検査官に正直に伝えましょう。
- 申告した場合:もし持ち込みが禁止されている品物だったとしても、正直に申告していれば、その場で放棄するだけで済み、罰金は科されません。
- 申告しなかった場合:隠していたことが発覚すると、高額な罰金や、将来のアメリカ入国に影響が出る可能性もあります。
「これは大丈夫かな?」と迷うくらいなら、必ず申告してください。その方が結果的に安全で、スムーズに入国できます。
出発前の最終チェックリスト
- [ ] 食品の原材料を確認したか? (肉エキス、禁止の果物・野菜はないか)
- [ ] 医薬品は元の容器に入っているか? (90日分以内、英語の処方箋・診断書も準備)
- [ ] 現金は$10,000相当額以下か? (超える場合は申告の準備)
- [ ] 液体物は「3-1-1」ルールに従って準備したか?
- [ ] モバイルバッテリーは機内持ち込み手荷物に入れたか? (絶対に預け入れ荷物に入れない)
- [ ] 税関申告書で、迷うものは正直に「はい」と申告する準備はできているか?
このリストを確認すれば、安心してアメリカへ出発できるはずです。どうぞ、安全で楽しい旅を!




