
インドネシアコーヒーと聞くと、「マンデリン」の深いコクや独特な香りを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?実はインドネシアは、世界第3位のコーヒー生産量を誇るコーヒー大国。個性豊かなスペシャルティコーヒーの宝庫でもあります。☕
苦味・コク・香りにインパクトがあり、一度飲んだら忘れられない魅力を持つインドネシアコーヒー。
この記事では、その奥深い世界を、歴史から人気の種類、味の特徴、現地ならではのユニークな飲み方、美味しい淹れ方、おすすめの豆まで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。
この記事を読めば、インドネシアコーヒーのすべてが分かり、あなたにぴったりの一杯がきっと見つかりますよ!
目次
1.インドネシアコーヒー代表3大銘柄
インドネシアにはたくさんのコーヒーがありますが、まずは絶対に知っておきたい代表的な3つの種類をご紹介します。それぞれの味の特徴を表で比較してみましょう。
銘柄 | 主な産地 | 味の傾向 | 特徴 | こんな人におすすめ |
マンデリン | スマトラ島 | 深いコクと苦味、大地やハーブのような香り | 酸味は穏やかで、重厚な飲みごたえ。独特の風味がクセになる。 | しっかりとした苦味とコクが好きな方、個性的な味を求める方 |
トラジャ | スラウェシ島 | 上品な苦味とクリーミーなコク、マイルドな酸味 | バランスが良く、キャラメルのような風味とクリーンな後味が特徴。 | バランスの取れたマイルドなコーヒーが好きな方、上品な香りを好む方 |
ガヨ | スマトラ島 | クリーンで明るい酸味、フローラルでフルーティーな香り | マンデリンとは対照的で、すっきりとした甘みが特徴。 | 酸味のあるスペシャルティコーヒーが好きな方、爽やかな後味を求める方 |
風味のモザイク:島ごとに違う!産地別の味と特徴
インドネシアは多くの島からなる国。島が違えば、コーヒーの味も全く異なります。まさに「テロワール(土地の個性)」の面白さが詰まっています。
スマトラ島:世界的銘柄「マンデリン」の故郷
世界的にもっとも有名で、インドネシアコーヒーの心臓部。かつてマンデリン族が守り抜いた伝統のアラビカ種が、高級コーヒー「マンデリン」の始まりです。
- マンデリン: 王道の深いコクと大地の香り。後述する「スマトラ式」が生む独特の風味が魅力です。
- ガヨ: クリーンでフルーティーなもう一つのスマトラ。スペシャルティコーヒー好きから近年注目を集めています。
スラウェシ島:「天空の王」トラジャの故郷
かつてセレベス島と呼ばれたこの島は、スペシャルティコーヒーの中心地です。
- トラジャ: 皇室も愛した上品でクリーンな味わい。島の山岳地帯で、伝統的な農法と手摘みによって丁寧に栽培されるため、非常に品質が高いのが特徴。フルボディでキャラメルのような風味とすっきりした後味は、特に日本で絶大な人気を誇ります。
ジャワ島:歴史と熟成が生む「オールドジャワ」
インドネシアコーヒー発祥の地。現在はロブスタ種の生産が多いですが、高品質なアラビカ種も栽培されています。
- オールドジャワ: ジャワ島を有名にしているのが、収穫した生豆を倉庫で2~3年寝かせて熟成させる「オールドジャワ」。これにより、酸味が抜け、力強くまろやかな味わいが増します。
インドネシア独自の味の秘密「スマトラ式(ギリン・バサ)」
マンデリンのあの独特な風味は、**スマトラ式(現地ではギリン・バサ)**と呼ばれる、この地域ならではの精製方法から生まれます。
簡単に言うと、コーヒー豆がまだ生乾きの柔らかい状態で脱穀してしまう、世界でも珍しい方法です。
雨が多く湿度の高いスマトラ島で、乾燥時間を短縮するために生まれた知恵ですが、このプロセスによって豆は独特の深い青緑色になり、大地を思わせる香りと重厚なボディが生まれるのです。
まさに、気候が生んだ偶然の傑作と言えるでしょう。
2.波乱万丈!インドネシアコーヒーの歴史
今の個性的なコーヒーが生まれた背景には、ドラマチックな歴史がありました。
- 始まりはオランダ: 17世紀、オランダがアラブの独占を破るため、植民地インドネシアにアラビカ種の苗木を持ち込んだのが始まりです。
- 「さび病」の悲劇: 19世紀末、さび病という病気が蔓延し、アラビカ種の農園は壊滅。一度はリベリカ種を導入するも失敗に終わります。
- ロブスタ種への転換: 危機を救ったのが、病気に強いロブスタ種。これにより生産は回復しましたが、現在もインドネシアのコーヒー生産の約90%をロブスタ種が占める理由となりました。
- 独立後の変化: 第二次世界大戦と独立戦争を経て、かつての植民地プランテーションは国の管理下に入ったり、小規模農家の手に渡ったりして、現在の生産体制へと繋がっています。
3.【必見】インドネシアのユニークなコーヒー文化と驚きの飲み方
インドネシアには、日本では考えられないようなユニークなコーヒーや飲み方がたくさんあります。現地を訪れたらぜひ体験したい文化です。
驚きのローカルコーヒードリンク
- タルアコーヒー(卵コーヒー): 西スマトラの名物。卵の黄身とコーヒーを混ぜたもので、独特の香ばしさと甘さが特徴の泡立つブレンドコーヒーです。
- コピ・ジョス(木炭コーヒー): グラスに入れたコーヒーに、真っ赤に熱した木炭を投入!石焼鍋のように沸騰しますが、味は意外にも甘く、木炭の味はしません。
- カワ・ダウン(コーヒーリーフティー): コーヒー豆ではなく、コーヒーの葉を乾燥させてお茶のように淹れる飲み物。ココナッツの殻で提供されることが多く、香ばしい味わいです。
- ドリアンコーヒー: ランプン州の特産品。ロブスタ種のコーヒーに、あの果物の王様ドリアンのエキスを加えたインパクト絶大な一杯。
- ジンジャー・コーヒー: 生姜とヤシ砂糖を入れた、ジャワ島でポピュラーな飲み方。体が温まり、風邪を引いた時にも飲まれる薬膳のようなコーヒーです。
不思議な飲み方
- コピ・トゥブルック: グラスにコーヒー粉末と砂糖を入れお湯を注ぐ伝統的な飲み方ですが、アチェ州などでは小皿で蓋をし、全体をひっくり返して皿にこぼれたコーヒーをストローで吸うという驚きのスタイルも!
- タバレク・コーヒー: 小皿の上に逆さにしたカップで提供され、ストローで息を吹き込み、染み出たコーヒーを飲むというユニークなスタイル。
4.コピ・ルアクの光と影:世界最高級インドネシアコーヒーの真実
「うんちコーヒー」として知られ、一杯数千円もするコピ・ルアク。その正体は、ジャコウネコが食べたコーヒー豆が、糞として排出されたものです。
なぜそんなに高価なの?
- グルメなジャコウネコ: ジャコウネコは、最も熟した美味しいコーヒーの実しか食べないと言われています。
- 腸内発酵による変化: 消化酵素の働きで豆に独特の香りがつき、苦味成分であるカフェインの量も半分ほどになるとされています。
- 希少性: 1匹から1日に採れる量はわずか3~4gと、非常に貴重です。
知っておくべき倫理的な問題
しかし、その人気が悲劇を生んでいます。需要の高まりから、野生のジャコウネコを捕獲し、狭い檻に閉じ込めて無理やりコーヒーチェリーを食べさせる工場的な生産が横行しています。動物福祉の観点から、この現状を理解した上で向き合うことが重要です。
自宅で本格的な味を!インドネシアコーヒーの美味しい淹れ方
インドネシアコーヒーの個性を引き出すなら、ハンドドリップがおすすめです。特にマンデリンのような深煎りの豆は、以下のポイントで淹れると美味しさが際立ちます。
- お湯の温度: やや低めの85℃~90℃。高温すぎると苦味や雑味が出やすくなるため、少し落ち着かせたお湯でじっくり抽出するのがコツです。
- 挽き方: 中粗挽き~粗挽き。細かくしすぎず、ゆっくりと旨味を引き出します。
- 淹れ方: 最初は少量のお湯で30秒ほど蒸らします。その後、中心にゆっくり「の」の字を描くように、数回に分けてお湯を注ぎます。
インドネシアコーヒーはどこで買える?おすすめの通販・店舗
「美味しいインドネシアコーヒーを飲んでみたい!」と思ったら、品質にこだわる自家焙煎店(ロースタリー)を探すのが一番です。ここでは東京・豊島区エリアを例におすすめのお店をご紹介します。
- 珈琲豆 優(要町): マンデリンやスラウェシなど、複数のインドネシア産コーヒーを扱う名店。様々な産地の味を試したいなら、まず訪れたい場所です。
- 珈琲豆焙煎所 Toden Coffee(雑司が谷): 注文後に焙煎してくれるスペシャルティコーヒー店。「ジャイアント・マンデリン」など、ユニークな豆に出会える可能性があります。
- 青海珈琲(Aomi Coffee)池袋店: 豆の品質鑑定マスターが在籍する信頼のお店。定番の「マンデリンG1」などを扱っています。
まとめ
いかがでしたか?インドネシアコーヒーは、歴史に育まれた個性、島ごとに全く異なる多様な風味、そして驚くほどユニークなコーヒー文化を持つ、非常に奥深い世界です。
- しっかりしたコクと苦味が好きなら「マンデリン」
- バランスの取れたマイルドな味が好きなら「トラジャ」
- フルーティーで爽やかな味を試したいなら「ガヨ」や「バリ」
この記事を参考に、ぜひあなただけのお気に入りの一杯を見つけて、その複雑で魅力的な物語を味わってみてくださいね。