
イギリス人の名前について知りたいですか? どのような名前が人気で、どんな由来があるのでしょうか。
この記事では、イギリスで人気の名前ランキングから、王室やセレブがトレンドに与える影響、さらには一般的な苗字のルーツまで、イギリス人の名前に関するあらゆる情報を網羅的に解説します。
伝統的な名前から現代的な名前まで、その多様で豊かな世界を探求していきましょう。
目次
イギリスで人気の名前ランキング
イギリスで今、どんな名前が人気なのでしょうか。英国を構成するイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドでは、それぞれ少しずつ人気の名前に違いがあります。公式統計に基づいた、最新の男女別人気名前ランキングを見ていきましょう。
🇬🇧 イングランドとウェールズ:伝統と多様性の融合した名前
イングランドとウェールズの統計(ONS発表)によると、男の子はノア(Noah/ノーア)、**女の子はオリビア(Olivia/オリヴィア)**が最も人気でした。
特にオリビアは2016年以来、不動の1位を誇っています。
注目すべきはムハンマド(Muhammad/ムハンマド)。様々なスペル(Mohammed、Mohammad など)を合算すると実質的な1位となり、特にロンドンなど大都市圏での人気が際立っています。これは、イギリス社会の多文化的な側面を象徴する結果といえるでしょう。
▼ イングランドとウェールズの人気名前ランキング(2023年)
順位 | 男の子 | 読み方 | 女の子 | 読み方 |
---|---|---|---|---|
1 | Noah | ノーア | Olivia | オリヴィア |
2 | Muhammad | ムハンマド | Amelia | アミーリア |
3 | George | ジョージ | Isla | アイラ |
4 | Oliver | オリヴァー | Ava | エイヴァ |
5 | Leo | レオ | Lily | リリー |
6 | Arthur | アーサー | Ivy | アイヴィー |
7 | Oscar | オスカー | Freya | フレイヤ |
8 | Theodore | セオドア | Florence | フローレンス |
9 | Theo | セオ | Isabella | イザベラ |
10 | Freddie | フレディ | Mia | ミア |
🏴 スコットランド:地域色豊かな名前が人気
スコットランド(NRS発表)でも、ノア(Noah/ノーア)が男の子で人気。一方、女の子ではアイラ(Isla/アイラ)がトップに輝きました。
「Isla」はスコットランドの島の名前が由来で、地域との強いつながりを感じさせます。
また、ハリス(Harris/ハリス)やローリー(Rory/ローリー)など、スコットランドの地名やゲール語の響きを持つ名前が上位に多く見られます。
▼ スコットランドの人気名前ランキング(2023年)
順位 | 男の子 | 読み方 | 女の子 | 読み方 |
---|---|---|---|---|
1 | Noah | ノーア | Isla | アイラ |
2 | Luca | ルカ | Olivia | オリヴィア |
3 | Leo | レオ | Amelia | アミーリア |
4 | Jack | ジャック | Freya | フレイヤ |
5 | Harris | ハリス | Lily | リリー |
6 | Rory | ローリー | Ava | エイヴァ |
7 | Oliver | オリヴァー | Ella | エラ |
8 | Theo | セオ | Grace | グレース |
9 | Archie | アーチー | Sophie | ソフィー |
10 | Finlay | フィンレイ | Emily | エミリー |
☘️ 北アイルランド:伝統的でクラシックな響きの名前
北アイルランド(NISRA発表)では、男の子はノア(Noah/ノーア)、女の子はアイラ(Isla/アイラ)が1位。
他地域に比べ、ジェームズ(James/ジェームズ)やグレース(Grace/グレース)など、時代を超えて愛されるクラシックな名前が根強い人気を保っています。
また、フィア(Fiadh/フィア)、イーファ(Aoife/イーファ)、キリアン(Cillian/キリアン)といったアイルランド・ゲール語由来の名前も多く、独自の文化遺産が色濃く反映されています。
▼ 北アイルランドの人気名前ランキング(2023年)
順位 | 男の子 | 読み方 | 女の子 | 読み方 |
---|---|---|---|---|
1 | Noah | ノーア | Isla | アイラ |
2 | James | ジェームズ | Grace | グレース |
3 | Jack | ジャック | Olivia | オリヴィア |
4 | Ezra | エズラ | Fiadh | フィア |
5 | Theo | セオ | Emily | エミリー |
6 | Cillian | キリアン | Lily | リリー |
7 | Leo | レオ | Amelia | アミーリア |
8 | Oliver | オリヴァー | Sophia | ソフィア |
9 | Oisin | オーシン | Annie | アニー |
10 | Luca | ルカ | Ava | エイヴァ |
イギリス人の名前の構造:ミドルネームと苗字の秘密
イギリス人の名前は、基本的に「名(First Name)」+「ミドルネーム(Middle Name)」+「姓(Surname)」で構成されます。それぞれに興味深い役割と歴史があります。
名(ファーストネーム)
個人を識別するための主要な名前です。イギリスでは、**アルフレッド(Alfred)の愛称であるアルフィー(Alfie)**や、**チャールズ(Charles)の愛称チャーリー(Charlie)**を、そのまま正式な名前として登録するケースが非常に多いのが特徴です。
ミドルネーム
必須ではありませんが、多くの人が持っています。ミドルネームの役割は様々です。
- 家族への敬意: 祖父母や親の名前を受け継ぐ。
- 家系の維持: 母親の旧姓を残す。
- 響きの良さ: ファーストネームと姓を補完する。
例えば、ウィリアム皇太子のフルネームは「William Arthur Philip Louis」で、3つのミドルネームを持っています。これは王室や貴族の伝統で、家系の重要人物の名前を含めることで血統を示しています。
姓(苗字)
先祖から受け継がれる「家」の名前です。イギリスの苗字は、その多くが12世紀から14世紀にかけて定着し、主に4つのカテゴリーに分類できます。
- 職業に由来するもの:
- Smith(スミス): 最も一般的な苗字。鍛冶屋(Blacksmith)が由来。
- Taylor(テイラー): 仕立て屋(Tailor)。
- Wright(ライト): 大工などの職人。
- Walker(ウォーカー): 布の仕上げ職人。
- 父親の名前に由来するもの(父称姓):
- Johnson(ジョンソン): 「ジョンの息子(John's son)」。
- Robertson(ロバートソン): 「ロバートの息子」。
- Jones(ジョーンズ)/ Evans(エヴァンス): ウェールズに多く、「ジョンの息子」が由来。
- 地名に由来するもの:
- Hill(ヒル): 丘の近くに住んでいた。
- Wood(ウッド): 森の近くに住んでいた。
- Green(グリーン): 村の中心の緑地の近くに住んでいた。
- 個人の特徴に由来するもの(あだ名):
- Brown(ブラウン): 髪や肌が茶色だった。
- Armstrong(アームストロング): 「腕が強い(Strong Arm)」。
- Short(ショート): 背が低かった。
名前のトレンドを動かす4つの力
なぜ特定の名前が流行り、廃れるのでしょうか? イギリスの名前トレンドの裏には、いくつかの大きな影響力があります。
1. 王室の影響力
イギリス王室のメンバーの名前は、常に国民の注目を集め、人気の名前に大きな影響を与えます。
- ジョージ(George): 2013年にジョージ王子が誕生すると、人気が急上昇しトップ3の常連に。
- シャーロット(Charlotte): 2015年にシャーロット王女が生まれると、翌年には順位が13もジャンプアップ。
- アーチー(Archie): 2019年にハリー王子とメーガン妃の息子として名付けられ、初のトップ10入りを果たしました。
王室が選ぶ名前は伝統的で品があるため、「王室のお墨付き」として多くの親に選ばれる傾向があります。
2. ポップカルチャーの影響力
現代において、テレビドラマ、映画、セレブリティは最も強力なトレンドセッターです。
- テレビドラマ: 大ヒットドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』の影響で、登場人物の**アーサー(Arthur)やトミー(Tommy)**の人気が再燃しました。
- 映画: 『スター・ウォーズ』シリーズのキャラクター、**フィン(Finn)**は映画公開後に人気が急上昇しました。
- セレブリティ: 有名人が自分の子供にユニークな名前を付けると、それが新たなトレンドになることも少なくありません。
3. 「100年ルール」と歴史のサイクル
名前の人気には、約100年周期で繰り返すという面白い傾向があります。つまり、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの世代の名前が、現代の赤ちゃんにとって新鮮で魅力的に聞こえるのです。
- アイビー(Ivy)、フローレンス(Florence)、アーサー(Arthur)、**エルシー(Elsie)**といった名前は、1900年代初頭に人気でしたが、一度は古風な名前とされました。しかし、近年になって人気がV字回復し、再びトップランキングに返り咲いています。
4. 社会階級とアイデンティティ
イギリスでは、名前が社会階級や個人のアイデンティティを反映する社会的指標として機能することがあります。
- 上流階級: **ルパート(Rupert)やクレシダ(Cressida)**など、伝統的で少し古風、かつ一般的にはあまり使われない名前を好む傾向があります。
- 多文化社会の反映: **ムハンマド(Muhammad)の人気は、イギリス社会の多様化を象徴しています。他にも、北欧神話由来のフレイヤ(Freya)やイタリア系のルカ(Luca)**など、国際色豊かな名前が人気を集めています。
まとめ:伝統と革新が織りなすイギリス人の名前
イギリス人の名前の世界は、歴史的な伝統を重んじながらも、グローバルな文化や現代のトレンドを柔軟に受け入れる、ダイナミックで魅力的なものです。
- 人気の名前は地域によって特色がある。
- 王室とポップカルチャーがトレンドに大きな影響を与える。
- 約100年前のクラシックな名前が再び流行している。
- 名前は多文化社会を映す鏡となっている。
次にイギリス人の友人ができたら、ぜひ名前の由来を尋ねてみてください。その背景には、きっと興味深い家族の歴史や文化が隠されているはずです。