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中秋節とは?いつ、何をする?由来や食べ物、日本・韓国との違いをわかりやすく解説

秋の夜空に美しい満月が輝く「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」。中華圏をはじめとする東アジアで古くから大切にされてきた伝統行事です。日本では「お月見」や「十五夜」として親しまれていますね。

この記事では、「中秋節って具体的に何をするの?」「なぜお祝いするの?」という疑問にお答えします。

その起源や歴史、月餅(げっぺい)などの食べ物、そして日本や韓国、ベトナムでの祝い方の違いまで、誰にでも分かりやすく解説します。

1.中秋節とは?基本の3つのポイント

中秋節は、一言でいうと**「秋の収穫に感謝し、家族の団らんを祝う日」**です。まずは基本となる3つのポイントを押さえましょう。

  1. いつ?:旧暦の8月15日です。現在の暦では毎年日付が変わり、だいたい9月中旬から10月上旬にあたります。
  2. 何をする?:家族や親しい人が集まり、満月を眺めながら食事を楽しみます。特に、家族の円満を象徴する「月餅」を食べるのが定番です。
  3. どんな意味がある?:満月を「家族団らん」や「完璧な調和」の象徴とみなし、家族の絆を深め、農作物の収穫に感謝する意味が込められています。

中秋節の起源と歴史

中秋節の歴史は非常に古く、そのルーツは古代中国の月を祀る儀式にまで遡ります。

  • 始まり(古代):古代の皇帝たちは、秋になると豊かな収穫を祈って月を祀る儀式を行っていました。これが中秋節の原型とされています。
  • 祝日として定着(唐の時代:618年~907年):唐の時代になると、旧暦8月15日が正式に「中秋節」という祝日として定められました。貴族や文人たちは月を鑑賞しながら詩を詠み、宴を開くようになりました。
  • 国民的な行事へ(明・清の時代:1368年~1912年):明・清の時代には、春節(旧正月)に次ぐほど重要な国民的行事へと発展しました。家族で集まり、月餅を食べるという現在まで続く習慣が定着したのもこの頃です。

このように、中秋節は宮廷の儀式から始まり、長い年月をかけて庶民の間に広がり、家族の絆を確かめ合う大切な日として根付いていったのです。

2.月の伝説物語|中秋節がもっと面白くなる3つの神話

中秋節の夜空に浮かぶ月には、古くから伝わるロマンチックで教訓的な物語があります。代表的な3つの伝説を知ると、月を見るのがもっと楽しくなりますよ。

2-1. 嫦娥(じょうが)と后羿(こうげい):月へ昇った女神の悲恋物語

最も有名なのが、女神・嫦娥の物語です。

昔、英雄的な弓の名手・后羿が、10個あった太陽のうち9個を射落として人々を救いました。その褒美として、彼は不老不死の薬をもらいます。しかし、悪巧みをする弟子から薬を守るため、后羿の妻である嫦娥は、自らその薬を飲み干してしまいます。すると彼女の体は軽くなり、天に昇って月の仙女となりました。悲しんだ后羿は、妻が好きだったお菓子や果物を供えて彼女を偲びました。

この伝説から、中秋節に月を拝む習慣が生まれたとされています。愛と犠牲、そして永遠の別れをテーマにした切ない物語です。

2-2. 玉兎(ぎょくと):自己犠牲の象徴、月で薬をつくウサギ

月にはウサギがいる、という言い伝えも中秋節の神話の一つです。

昔、仙人たちが貧しい老人に変装し、キツネ、サル、ウサギに食べ物を乞いました。キツネとサルは食べ物を持ってきましたが、ウサギだけは何も用意できませんでした。悩んだウサギは「私を食べてください」と自ら火の中に飛び込みます。その自己犠牲の精神に心を打たれた仙人たちは、ウサギを月で永遠に生きる「玉兎」として甦らせました。玉兎は月で不老不死の薬をついていると言われています。

この物語は、日本では「月でウサギが餅つきをしている」という話に変化して伝わっています。

2-3. 呉剛(ごごう):終わりなき罰を受ける男

もう一つは、努力と忍耐を教える物語です。

木こりの呉剛は、仙人になるための修行を怠けてばかりいました。罰として、彼は月にある巨大な桂(かつら)の木を切り倒すよう命じられます。しかし、この木は切ってもすぐに再生してしまうため、呉剛は永遠に木を切り続けなければなりません。

この物語は、忍耐を欠いた努力の虚しさを教えています。

3.中秋節の食べ物といえば「月餅(げっぺい)」

中秋節に欠かせない食べ物が月餅です。その丸い形は満月をかたどっており、**「家族の円満」「団らん」**を象徴しています。月餅を家族で均等に切り分けて食べることは、家族の絆を深める大切な儀式です。

もともとは月へのお供え物でしたが、時代と共に様々な種類が作られるようになりました。

  • 広東式(広式):最もポピュラーなタイプ。しっとりした薄皮に、蓮の実の餡や塩漬け卵の黄身(満月に見立てる)が入っているのが特徴。
  • 北京式(京式):ごま油の風味が香ばしい、少し硬めの皮が特徴。甘さは控えめです。
  • 蘇州式(蘇式):パイ生地のようにサクサクとした層状の皮が特徴。甘い餡だけでなく、塩気のある肉餡などもあります。

近年では、チョコレートやアイスクリーム、フルーツを使ったモダンな月餅も登場し、人々の好みや時代の変化に合わせて進化し続けています。

4.どう違う?日本・韓国・ベトナムの中秋節

中秋節は東アジアの各地に伝わり、それぞれの文化と融合して独自の発展を遂げました。ここでは、日本、韓国、ベトナムでの祝い方を見ていきましょう。

日本の「お月見」:静かに月を愛で、収穫に感謝する

日本では「お月見(十五夜)」として知られ、中国の賑やかなお祝いとは少し趣が異なります。

  • 過ごし方:家族団らんよりも、自然の美しさを静かに鑑賞することに重きを置きます。
  • お供え物
    • 月見団子:満月を表す丸い団子。これを食べると健康で幸せになれるとされます。
    • ススキ:稲穂に似ていることから、魔除けや豊作を願う象徴として飾られます。
    • 里芋など:芋類の収穫期でもあるため「芋名月」とも呼ばれ、里芋や栗などの秋の収穫物もお供えします。

韓国の「秋夕(チュソク)」:先祖に感謝を捧げる国民の祝日

韓国では「秋夕(チュソク)」と呼ばれ、旧正月と並ぶ最も重要な名節の一つです。

  • 過ごし方:家族団らんもしますが、先祖供養が最も重要な目的です。多くの人が故郷に帰り、家族と共に過ごします。
  • 主な儀式
    • 茶礼(チャレ):収穫したばかりの新米や果物でご馳走を作り、先祖に感謝を捧げる儀式を行います。
    • 省墓(ソンミョ):儀式の後、家族で先祖のお墓参りに行きます。
  • 食べ物:代表的な食べ物は**松餅(ソンピョン)**という半月形の餅です。新米の粉で作った生地でゴマや栗の餡を包み、松の葉を敷いて蒸します。

ベトナムの「テト・チュントゥ」:子どもたちが主役のお祭り

ベトナムでは「テト・チュントゥ」と呼ばれ、**「子どものためのお祭り」**として独自の発展を遂げました。

  • 過ごし方:主役は子どもたち。街中がお祭りのような雰囲気になります。
  • 主なイベント
    • 提灯行列:子どもたちが星の形など色とりどりの提灯を持って街を練り歩きます。
    • 獅子舞(ムアラン):太鼓の音に合わせて獅子舞が披露され、幸運をもたらすと信じられています。
  • 食べ物:中国と同じく月餅(バイン・チュントゥ)を食べますが、豚肉などが入った塩味のものが人気です。
特徴中国(中秋節)日本(お月見)韓国(秋夕)ベトナム(テト・チュントゥ)
主な目的家族の団らん、調和美的鑑賞、収穫感謝祖先崇拝、収穫感謝子どものお祝い
象徴的な食べ物月餅月見団子松餅(ソンピョン)月餅
主な活動家族での食事、月見ススキを飾り、月を眺める先祖祭祀、墓参り提灯行列、獅子舞

現代における中秋節の楽しみ方

現代でも中秋節は大切な文化として息づいています。

  • 月餅商戦:この時期になると、高級ホテルや有名店が趣向を凝らした豪華な月餅を発売し、「月餅商戦」と呼ばれるほど市場が盛り上がります。大切な人への贈り物としても人気です。
  • イベント:横浜中華街などのコミュニティでは、ランタンフェスティバルや民族舞踊など、中秋節を祝う大規模なイベントが開催され、文化を体験できる機会となっています。

商業化が進む一方で、家族が集まり、絆を再確認するという核心的な価値は今も変わらず受け継がれています。

まとめ

中秋節は、美しい満月の下で秋の収穫に感謝し、家族の円満を祝う、心温まる伝統行事です。その起源は古代中国にあり、月をめぐる豊かな伝説と共に東アジア各地へ広がりました。

  • 中国では家族団らんを祝う日
  • 日本では静かに月を愛でる「お月見」
  • 韓国では先祖を敬う「秋夕」
  • ベトナムでは子どもが主役の「テト・チュントゥ」

このように、それぞれの国で独自の文化として発展しましたが、その根底にあるのは、家族を想い、自然の恵みに感謝するという普遍的な願いです。

今年の旧暦8月15日には、あなたも夜空を見上げて、遠くにいる大切な人に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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